走り出せ、コスモス<前編>
それから先生は、何人か名前を呼んで、みんな元気に返事をしていた。
やっぱり、前からここに通ってた人が多いんだなぁ‥
「窓を開けてみんなにご迷惑をかけた武町亘くん。みなさんにお詫びを」
「えっ!せんせ…」
教室がどっと笑った。
武町くんと呼ばれたその男の子は、結局みんなに向かってペコペコして謝っていた。
「はい、森定真緒さん。
(もりさだ まお)」
真緒ちゃんは元気よく返事した。
あ…
次 私だ
真緒ちゃんから視線を上げると、藤石先生と目が合った。
先生は、私が初めてだからか
少し笑った。
うわあ…
あんな優しい笑顔を
私に向けてくれたぁ…
「吉風沙枝さん
(よしかぜ さえ)」
私ははじめ少し戸惑ってしまったけど、
ちゃんと笑顔を返せた。
「はい」
私は卒業式のときよりも爽やかな返事をした。
これは間違いなく、
先生の空気がそうさせた。
温かいものが伝染したのを感じた。