走り出せ、コスモス<前編>
「沙枝ちゃん!!
超かわいい~っ!!」
今日から念願の夏服。
短めの白いシャツに、
紺と白のプリーツスカート
急に教室が明るくなった
クーラーはまだつけちゃだめだから、窓が全開
涼しい風が、私のポニーテールをゆらす
7時間目が終わると、すぐに教室を出た。
今日は火曜日。
自転車にまたがり、恋しい人のところを目指す。
桜は、もうすっかり緑が生い茂っている
その上に広がる空は、雲ひとつないきれいな青色
――ガチャッ!
ガラス越しに座っているのは
今日一日
思い続けていたあの人。
私が勢いよくドアを開けたので
驚いて彼はこっちを振り向いた
つながる視線――
彼は優しく微笑んだ
背もたれから背中を離し
いすを回して立ち上がる
持っているB4のプリントの束を半分にしながら
先生達のデスクルームから出てきた
「早いね」
「こんにちは!」
礼をすると、ポニーテールがゆれた