走り出せ、コスモス<前編>


「沙枝ちゃん!!

超かわいい~っ!!」


今日から念願の夏服。

短めの白いシャツに、

紺と白のプリーツスカート


急に教室が明るくなった


クーラーはまだつけちゃだめだから、窓が全開

涼しい風が、私のポニーテールをゆらす



7時間目が終わると、すぐに教室を出た。


今日は火曜日。

自転車にまたがり、恋しい人のところを目指す。


桜は、もうすっかり緑が生い茂っている

その上に広がる空は、雲ひとつないきれいな青色




――ガチャッ!

ガラス越しに座っているのは

今日一日

思い続けていたあの人。


私が勢いよくドアを開けたので

驚いて彼はこっちを振り向いた



つながる視線――


彼は優しく微笑んだ


背もたれから背中を離し

いすを回して立ち上がる


持っているB4のプリントの束を半分にしながら

先生達のデスクルームから出てきた


「早いね」


「こんにちは!」


礼をすると、ポニーテールがゆれた







< 60 / 128 >

この作品をシェア

pagetop