走り出せ、コスモス<前編>



わ…!



ほわんと

いいにおいがする


「あれ?」

目の前には 先生の服


布から伝わる かすかなにおい


ち 近い…!


「あはは ごめん

気のせいだった

光ってただけだった」

手を離して 先生は笑った


「じ、授業始まるまで

自習してます!」


そう言って、二階へ駆け上がって逃げた。


階段を上りきった後、足がゆるんで、床に座り伏せてしまった。

目をぎゅっとつぶって、心臓の弾みを押さえようとした。


先生の… 家のにおい


ほわほわして

くらくらするような


洗剤… 何使ってんのかな

いいにおい だった


私も

同じ洗剤にしたい


においを鮮明に思い出して

更に心臓の速度を速めてしまった






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