走り出せ、コスモス<前編>
「吉風さん、ちょっとここが分からないんだけど…」
ウワサの武町くんにそう話しかけられた。
「えっ? 私っ??」
私そんな、全然教えられるとこないと思うんだけど…っ!
「だって吉風さんいつも予習やってるし
授業中も当てられたら答えられるし」
え!?
だってまだ3日くらいしか授業してないし!
てかみんな予習してないの!?
「俺、吉風沙枝って名前、模試の上位者名簿で知ってたよ」
私がこのクラスで一番頭いいと思ってた子にそう言われて
すごく照れ臭かった。
「3年の秋くらいから突然現れて、ぐいぐい上げてくから俺超焦ったもん」
上位者の名簿とか、
見たことなかった。
県は広いし、
関係ないものかと…
…そっか
私、そうだったんだ
武町くんたちに
そう思ってもらえるくらい
結構やれてたんだ
中3の時のあの血の滲むような努力は
一高合格よりもっと上まで連れてってくれてたのかな
もしかして
一高でもやっていけるかも…!?