初恋+one
焦って早口になりそうなところを必死に押さえる。
聞きたくもない事を聞くあたしは、
なんて馬鹿なの?
貴大に見えないところで、
強くぎゅっと手を握る。
「・・・・・・・聞きたい?」
「え?」
まだまばらに聞こえる人の声の間から、
小さな小さな貴大の声が聞こえた。
「俺のそーゆう話」
「そーゆうって・・・・・・・
貴大本当に好きな人、いるの?」
声が震えた。
あたしは貴大を見てるのに、
貴大はちっともあたしを見てはくれない。
「ねぇ、いるの? 教えて?」
“言わないで”
「教えて」
“言わないで”
震える手を握って、
必死に貴大に問いかける。
本当は言ってほしくないのに、
“知りたい”と思うあたしがいる。
“いない”って、言って・・・・・・・・