初恋+one
「好きじゃないよ」
小さな声だけど、
だけどはっきりした声であかりは言った。
“好きじゃない”
確かにこう言った。
「あたし、知ってるんだよね。
創平って好きな人も彼女も作らない主義とか言ってるけど、
ほんとは忘れられない女の子がいるんだよ。
多分今でもその子のこと好きなんじゃないかな?
あたし、好きな人がいる人は好きにならないって決めてるの。
だから創平は好きじゃないよ
“普通”なの。好きでも、嫌いでもない」
あたしの顔を見てにこっと笑ったかと思うと、
あかりはそのまま、
お茶でも入れてくるねと言って部屋から出て行った。
ねぇ、あかり。
あかりは創平君のこと好きじゃないんだね。
でもね、あたし知ってるよ。
あかり嘘付くとき、
下唇をかむんだよ・・・・・・・
“好きじゃない”
そう言ったあかりの顔は、
とても悲しそうで
かんだ下唇が、
余計に悲しさをアピールしているようにも見えた。