初恋+one
数学のテスト中。
既に解答欄が埋まった俺は、
眠いわけでもないのに目を瞑っていた。
目を開けたら、
窓際に居るあいつを見つめてしまいそうで怖かった。
『旬のとこ行ってやれよ』
ふいに自分が言った事を思い出して、
手のひらで顔を覆った。
進みも戻りも出来ない。
意気地なしの俺が付いた、
最後のかっこいい言葉。
かっこいいかはわかんねぇけど、
俺の中で精一杯の“優しい嘘”。
バカみたいだ。
抵抗しなかった柊に勝手に期待して、
事情が変わったら俺の都合で引き離す。
最後に見た、
柊の顔が忘れられなかった。
友達だと思ってた奴が、
いきなり抱きしめてきて。
そうかと思えば、突き放されて。
もう俺の事を嫌いになったんじゃねぇか。