RIRIA
そこにいたのは、ドレッシングルームに差し込む月明かりと蝋燭の炎に照らされ、暗く光る赤髪だった。

侵入者。

いくらなんでも、王宮の中にここまで深く入ってくることを許すとは、警備の兵は何をしているのか。

おかげで、とんでもない奴に大変な秘密が漏れてしまったじゃないかと、リアは赤髪を睨みつけながら心の中で悪態をついた。
ベッドルームに剣を置いてきたことを心から後悔した。


「赤髪のゼン……何のつもりだ」

「また会おうって言ったろ。あんたに会いに来たんだよ」

にやりと笑うその顔は、思ったよりも悪人の顔ではなく普通の青年が浮かべそうないたずらっぽい笑顔だった。

ゼンは、ゆっくりとリアに近付いた。
壁際に立っていたせいもあって、リアは逃げることが出来ず、きっと睨みつけるだけが精一杯だった。

リアの金髪を、ゼンは一房掴んで、そして口付けた。

「なっ……!」

赤面して、リアは固まる。

「あんたの髪からいい臭いがしたんだ。花みたいな香り。女の臭いだった」

そして、まだ固まっているリアを、その青い瞳で見つめた。

「なんで男のフリなんてしてるんだ?」

不愉快なのか、羞恥心なのかよくわからない感情に、リアは顔をしかめた。

「……貴様には関係ない……」

か細く答えて、ゼンの胸を強く押した。
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