RIRIA

自分に戻る瞬間に

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「……ア……リア!」

はっとして、我に返った。
顔を上げると、エリザベスが不思議そうに首を傾げてこっちを見ていた。

「どうしたのです?あなたが上の空とは珍しいですわ」

朝食の席。
長テーブルで食事をするエリザベスの横に立っていたリアは、あろうことか考え事に没頭して、主人の呼びかけすら聞こえていなかったようだ。

「申し訳ありませんっ……」

ぺこりと頭を下げると、クスリと笑った。

「怒っているのではなく、心配しているのです。友達として」

ふわりと、エリザベスは微笑んだ。

エリザベスは、知っている。
リアが本当は女だということを。

それでも、リアとエリザベスは主従の関係である前に、幼なじみでもあるので、複雑な事情を理解して黙っている。

そんな彼女はリアの悩みなどすぐに見抜いてしまうようだった。

リアは、自分の胸元に、まだあの懐中時計を忍ばせていた。

捨てることも、部屋に置いておくこともできずに結局持って来てしまった。
それと同時に昨日の出来事を思い出し、上の空になってしまったのだった。

「なんでもないんです。心配しないで下さい」

心配をかけないようにエリザベスに微笑むと、ひとまずは納得してくれたようでエリザベスは食事に戻った。
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