RIRIA
突然強く抱き締められて、リアは体中が暑くなった。
だけど不思議と、嫌ではなかった。

「ゼン……」
「リア……俺と来い。男のふりなんてやめちまえ」

苦しそうに言うゼンの胸の中で、リアは顔を曇らせた。ぎゅっと目をつぶり、ゼンを抱き締め返した。

「……ありがとう……でも、それは出来ない……」

切なげな、しかしはっきりとしたリアの声。
ゼンは抱き締める力を強めて、強く言う。

「誰がお前を男にさせてる……!?王様か、王女か?あんたの父親か?」

リアは首を振る。
そして、ゼンの体から自分の体をそっと離した。

「私は、自分で男になったんだ。王女を守って差し上げたい。私にしか出来ないことだから……」

そう言ってリアは、今までで一番美しく、一番切なげに微笑んだ。

「私を少しでも女に戻してくれてありがとう。だけど今の私には、それは残酷すぎる幸せだよ。もう、男として生きることは、変えられないんだから」

ゼンは悔しさに、唇を噛み締めた。
自分の中の貪欲さが彼女を心から欲しているのに、力ずくでは奪えない。
彼女の中には無理矢理にはとても変えられないような芯の強さがあった。
そして簡単には触れられない気高さがあった。

それからろくな会話もしないままに、二人は王宮に戻った。
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