暴走☆執事と炸裂ラヴァーデイス
周りを見る余裕もなく、宏海の早足についていくので精一杯。

だから、みやびは気づかなかった。

宏海? 何かひとつに気をとられると、他がおろそかになるタイプなので、気づくはずがない。


──そう、忙しく働きながら。

「見た? 宏海様の部屋から女の子が」

「えぇ、手を繋いでいたわよ」

「許せませんわ……」


そんな囁きが交わされていたことに。



「──こちらです」


丁寧に模様の彫られた、無駄に大きい扉の前につき、宏海はようやくみやびの手を放した。

手首に残るは赤い跡。


けどそんなのも気にとめないくらい、妙な緊張感で高鳴る胸をおさえるみやびとは裏腹に、宏海は冷静なまま扉をノックした。
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