机の中の恋


僕は誉木を自宅に連れ帰った。



「親はいないから」

「…え?」

「親父も母さんも表の店に出てる」

「お店…?」

「焼鳥屋。…えっと…救急箱…」



俺は箪笥の上から救急箱を取った。


ガキの頃はよく世話になった。



表の店はまだ準備中だろう。


親が店をやっているなら、そこで働けばいいだろうと言われるが

親父に却下された。



『お前はまだ若いから、オグの店で修業を積んでこい』


そう言われた。




修業って…何のだよ…。



「…っと…凍みるぞ?」

「うん……いったい!」

「…悪いっ!大丈夫か?」

「ん…平気」



誉木は涙目で頷いた。



我慢強いな。

よろしい。



僕は誉木の頭を撫でた。


子供扱いするなという目で見られたが

敢えて無視しといた。




目を落としたスカートが所々破れていた。





…僕のせい、だよな。




「よし、手当て終わり」

「ありがとう」







僕は



この笑顔を守らなければいけない。










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