音色
今にも壊れてしまいそうなくらい不安定なのに、確かにそこに立っている。
まるで、小さな炎だった。
聞いた瞬間、俺は嫌いだと思った。
無性に、腹が立った。
だけど、そのざわめきが心地よかった。
国立大学の進学を蹴り、高校卒業と同時に家を飛び出してきたときの俺は、あんなにも煮えたぎっていて、誰にも触れさせなかったのに。
この店を見つけて、夢に向かって進めている安心感にいつの間にか牙を抜かれ、その熱がぬるく冷めていっていることに、そのときようやく気づいた。
これでいいや、と、流れに身を任せる俺は、クラスの皆に合わせて何となく赤本を解き続けていた時の俺と、何が違うのだろうか。
あいつが、司沙が、教えてくれた。
思い出させてくれた。
これじゃだめなんだと。
まるで、小さな炎だった。
聞いた瞬間、俺は嫌いだと思った。
無性に、腹が立った。
だけど、そのざわめきが心地よかった。
国立大学の進学を蹴り、高校卒業と同時に家を飛び出してきたときの俺は、あんなにも煮えたぎっていて、誰にも触れさせなかったのに。
この店を見つけて、夢に向かって進めている安心感にいつの間にか牙を抜かれ、その熱がぬるく冷めていっていることに、そのときようやく気づいた。
これでいいや、と、流れに身を任せる俺は、クラスの皆に合わせて何となく赤本を解き続けていた時の俺と、何が違うのだろうか。
あいつが、司沙が、教えてくれた。
思い出させてくれた。
これじゃだめなんだと。