音色
土曜日の夜。
「今日も行くの?司沙」
「うん。そんなに遅くはならないから」
薄いグレーのパーカーを羽織ると、私は少し乱暴に、ギターのケースを掴んだ。
指を冷やさないように、今日は手袋もちゃんと用意しておいた。
土曜日。一番好きな曜日。
外に出ると、空はすっかり醒めていた。
星が綺麗に見えるのも、寒い季節が好きな理由の一つ。
もう少ししたら、星も月も、息で曇ってしまうんだろうけれど。
五分とかからない駅までの道を、私は早足で歩いていった。
時間は無駄にできない。
乗り込んだ電車が終点まで行ってしまえば、そこからまた五分くらいで学校に着く。
でも、今日はその二駅前に降りてしまう。
毎週土曜日の夜、私はこの駅の近くで歌うのだ。