音色
塗り直されたばかりの、クリーム色の壁とくすんだ桃色の柱は、街灯で一面オレンジ色に染め上げられていた。


いかにも真新しいこの駅は、二年くらい前、近くに建てられた大きなスーパーのおかげで利用者数が膨れ上がったため、半年前まで改装工事をやっていた。


私がここへ通い始めたのは、工事が終わった夏休みのことだった。



本来色とりどりの街は、こんな物寂しげなオレンジと、温かくも陰鬱な紺に包まれていながら、むしろ昼間よりも明るく見える。


ここの人口は、昼夜であまり差がないから、街灯やネオンのうるさい夜のほうが賑やかなのだ。



スーパーはまだ開いている。

近くのカフェの大きな窓からは、二十代くらいのお姉さんたちが三、四人でテーブルを囲んでいるのが見える。

二車線道路の向こうには、焼鳥屋からにこやかに出てくるスーツ姿の男の人たち…。



もしかしたら、もう顔を覚えられていたりして。

< 15 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop