音色
『真面目に考えなさい』
あのときのお母さんの言葉は、今も頭の中で響いている。
まるで、意地悪く喉をつつく魚の小骨のように、その言葉は私の胸を刺す。
息をするのもうっとおしいくらいの、弱く、重い痛み。
遊んでるんじゃない。
そう叫ぶ前に、私はいつも自分の言葉を、冷たい空気とともに飲みこんでしまう。
尚央が、聞いてる。
そこに、尚央がいる。
分かっていても、
私はやっぱり、
ひとりで歌っていた。