音色
風が吹いても、もうすっかり暖かくなってきた四月の終わり、私はいつも通り、駅にいた。
学年が上がり、街の風景も少しは新鮮に見えた気がした。
カフェからは、見慣れた女の人たちの冷めた視線が、どこということもなく喧騒の中に注がれている。
まだパリッとした綺麗な制服を、不器用に着こなして歩く中高生の姿も見える。
もう、夜遊びを覚えた一人前のオトナの顔をしているけど、あの冷めた視線まで真似る必要なんか、なかったはずだ。
誰もが、熱を持たない人形だった。
それは、季節が変わっても同じだった。
「ねえ」