音色
しゃがみ込んでギターを片づけている時、頭上から低い声が降ってきた。
まただ。
私はうつむき押し黙ったまま、手を止めた。
「先週も、ここで歌ってたよね?」
「…はい……!」
その男の人の顔が、いきなり私の前に現れたので、思わず私は顔を上げてしまった。
彼は、私のその反応に満足したように、穏やかな目で笑った。
無造作に作られた、少し長めのくすんだ茶髪の先が、彼の背後の駅の灯りを透かして金色に輝いている。
吸い込まれそうな彼の瞳は、いつものように無関心を装うことを、私に許さなかった。
「…聞いてたんですか?」
視線をギターケースに戻し、片づけを再開させながら、私はいかにも不機嫌そうに質問した。
「うん、聞いてたよ。毎週ここで歌ってるよね?」
「…はい」
答えたところで、私は、もう一度彼のほうに目を向けた。