音色
「知ってるんですか?」
「ん?」
「毎週、歌ってること…」
「うん、知ってるよ」
先に話しかけてきたのは彼なのに、むしろ彼のほうが、私を受け入れてくれているような気がした。
簡単な返事の中に、そんな深みがあった。
彼が私を“見つけた”のは一ヶ月前、友達と飲みに行くために、この駅の近くを通り過ぎた時だった。
三月の終わりごろだった。
「何となく共感っていうか、さ。誰に歌ってるのかなって思って」
「ん?」
「毎週、歌ってること…」
「うん、知ってるよ」
先に話しかけてきたのは彼なのに、むしろ彼のほうが、私を受け入れてくれているような気がした。
簡単な返事の中に、そんな深みがあった。
彼が私を“見つけた”のは一ヶ月前、友達と飲みに行くために、この駅の近くを通り過ぎた時だった。
三月の終わりごろだった。
「何となく共感っていうか、さ。誰に歌ってるのかなって思って」