音色

誰に歌っているのか。


もちろん、彼は知らない。知っているはずがない。


なのに、知っているくせにあえて質問したような、本当はすべて知っているような、彼はそんな言い方をするのだった。


だから、私は自然にその疑問には答えずに過ぎた。


答えるかどうかは、私の意志に委(ゆだ)ねられたのだ。




「どう、でした?」

「ん?」

「私の、その…歌…は…」


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