音色
彼はちらりとあたしの顔を見た。
「だからこそ気になったんだよね。俺は好きだよ、君の歌」
胸の奥で、さっきとは違う痛みが走った。
「たぶん、若いうちは皆そうだよ。俺もそう。だから、ホントはそんな偉そうなこと言えないんだけどね」
俺も、そう。
「…音楽、やってるんですか?」
「うん。実はね、すぐ近くで金曜の夜、毎週歌ってんだ」
「そう…なんだ」
「びっくりした?」
ぱっと開いた彼の笑顔につられそうになったあたしは、再びその顔から目を逸らした。
「なんかさ、仲間見つけたって感じがしたんだ。だから、毎週聞きに来てた」
「あ…」