音色
家を出ると冷たい風が、私の体を通り抜けた。

まるで、私を咎(とが)めるように。


十月にもなると、厚手のベージュのカーディガンだけでは、もう肌寒い。

かすかに熱を守っていた、暗い栗色の髪でさえ、一瞬で冷気を含んでしまった。

真っ直ぐ背中に流れる、柔らかく長い私の髪は、風にさらわれやすいのだ。


駅までは五分で着くけれど、私は仕方なく、鞄から引っ張り出したグレーにチェックのマフラーを軽く巻いてから、門を出た。



空は青く、高かった。



寒いのは苦手だけれど、この季節は嫌いじゃない。

ただ、日が経つにつれ、私は憂鬱になっていった。


今日は、また二者懇談があるから。

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