音色

私は、聞きに行けない。

あなたの歌…。



「あぁ、来ちゃダメだよ。俺はもうちょっと遅い時間に来てるから。危ないでしょ?」


「…たぶん…怒られる」


「いいよ。もし君に何かあったら、俺の毎週の楽しみがなくなっちゃうでしょ」



その後も幾度となく思ったことだけれど、彼はこういうセリフを恥ずかしげもなくサラリと言ってしまう人だった。


それとも、そうでも言わなきゃ、私が心を開かないことを、はじめから分かっていたのかもしれない。




彼は、そういう人だった。

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