音色
「買ってきてくれた?」
「はい、言われた通りに買って参りました」
渡した茶色い紙袋に収まった、水彩絵の具の白いチューブを確認すると、尚央は満足げに微笑んだ。
色素の薄い大きな瞳を細めたその無邪気な顔は、私が知っている中で、一番愛嬌のある彼の顔だ。
普段の大人びた、時には無機質にさえ感じる彼の表情が一変する、数少ない瞬間。
夕日を浴びた髪の先と同じように輝く、みずみずしいその笑顔を見て、私もつられて微笑んだ。
尚央の寝ころんでいたベッドの横の、白い小さな棚の上に、先の少し丸まった画用紙が置いてある。
「また何か描いたの?」
「あぁ、それ?うん」
彼に断りもなく、それもいつものことだけれど、私はその絵をそっと手にとった。