音色
だめだ。
深くため息をついて、私は英単語帳を膝に伏せた。
こんな気持ち、ただの嫉妬だ。
悩むこともなしに、歌が作れるはずがない。
好むと好まざるに関わらず、彼らは雲の上の人、私は、ただの人。
私だって…。
再びベッドに倒れこみながら、乱暴に鞄に投げ込んだつもりの単語帳が、全く違う軌道を辿って、ベッドの横の黒いケースに命中した。
うまく弱点をついたのか、立てかけてあったケースは壁を引っかきながら、ゆっくりと倒れていく。
「あ…」