音色
静かな沖の水面(みなも)はまぶしい夕日を受けて、遠く輝いている。
そのきらめきの一つ一つは、やがて大きな波に飲み込まれ、岸辺へと流れ着く。
波は高くなり、低くなりながら、鮮やかな旋律を描いて揺らめいている。
頑(かたく)なな岸にぶつかり、白く砕けてしまう前に、私はその波を慎重にすくい上げる。
私の腕の中で、弦は震える。
波に溶けた小さな光たちは、そこで再び主張しあい、音となって踊り出す。
誰もはぐれないように、その一つ一つを波に包みながら、しかしその色を殺さないように、私の声とギターの音は、ゆっくりとその滑らかな波線をたどってゆく。
走り出したら、もう止められない。