音色
「長森(ながもり)さん、今回も調子良かったわね」

担任の黒川先生から、夏休み明けに受けた模試の結果が渡された。

各科目の全国偏差値を示す、ほとんど歪みのない五角形は、私を望まない世界へと誘う、小さく意地悪な門のように見える。


「国語と英語は偏差値60に近いし、数学はちょっとヘコんでるけど…悪くないわ」


先生の次の言葉を、私は何となく予想していた。


「これなら、国公立も目指せるわね。どう?」


だから、二者懇談は憂鬱だったんだ。
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