音色
「なに、彩?急に」
複雑な数式を解き続けていた手を止めて、彩は机に肘(ひじ)をつき、ため息混じりにそう言った。
「受験生ももう終わりなんだあ、って思って。短かったねえ」
「まだ半年以上残ってるじゃない」
「半年なんて、すぐ過ぎちゃうよ!私なんて、昨日まで二年生だった気がするんだもん」
残りの勉強時間が少ないことを、彩は心配しているのだった。
「司沙はどうするの?やっぱり大学は行かないの?」
「…うーん、まだ迷い中」
「そっかあ…」