音色

「あ…まだ、ちょっと…」

予想外の質問ではないのに、私はついうろたえてしまった。

「司沙はね、大学には行かないよ。ね、司沙?」

「え?」

私とお母さんが、同時に彩の顔を見る。

「私が決めたの!だって司沙、ずっと迷ってるんだもん」

「何勝手なこと言ってるの」

お母さんは優しい眼差しのまま、あきれたように笑う。

「本当のとこ、どうなの?司沙ちゃん」

「まだ、迷ってるんです…。彩の言うとおり。親は、進学してほしいみたいですけど」

「親御さんは、いろいろ心配だものねえ」

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