音色
「私もそうなったら、お母さん嬉しいのかなって…考えてた」
「…そっか」
私達の後ろ、クリーム色の壁の上で、遠い闇に向けて、銀色の電車が走っていった。
「司沙は、公務員になりたいの?」
「ううん」
「じゃあ、何でそう思ったの?」
「…お母さんが、喜ぶかなって。お父さんも」
「親御さんのため?」
会話の中で、私は何度も黙り込んだ。
それでも、翔平は嫌な顔一つせず、穏やかな瞳が曇ることはなかった。