音色

「私、今までわがままだったから…。私がちゃんと大学に行って、ちゃんと働けば…」

温くなりかけたコーラの缶を、親指の先でなぞる。

「そしたら、そのほうが、お母さん達は幸せなの」


気持ちとは裏腹に、私は少し笑いながら話していた。


電車がまた一本到着し、駅の改札を通って、人がたくさん流れ出てくる。

ちょうど、帰宅ラッシュの時間だった。


「…いい子だよ、司沙は。俺、そんなことあんまり考えなかったから」

心なしか寂しそうに、翔平が言う。


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