音色

壁に背中を寄せながら、翔平がまた話し始める。


「自分のことも幸せにできないのに、人のこと幸せになんかできないよ。司沙はいい子だけど、自分のことあんまり考えてあげてないんじゃないの?」


胸のずっと奥から、痛みがこみ上げる。

私につきまとう冷たい影が悲鳴をあげているのが、初めて聞こえた気がした。


「司沙は、本当はどうしたいの?」



私は…。


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