音色

六月も半ばを過ぎ、日が暮れても肌寒さを感じることが少なくなった。

クラスの女の子四人で歩く街には、もう半袖やサンダルといった軽装が珍しくない。


駅へ向かう人波の中で、ふとため息をつく私に、彩が隣から笑う。


「今日はすっかり人気者だったねえ」

「そんなことないよ」

「ね、それもしかしてプレゼント?」


歩みを止めた私の顔を、彩がのぞきこむ。

「え!何もしかして…」

「ちょっと何、司沙!受験生なのに彼氏ー?」


彩の声に反応して、他の二人まで食いついた。


「違うよ!そんなんじゃなくて…あ」


目をそらした先に、見覚えのある茶髪が現れた。

< 64 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop