音色
蒸し暑い街には、ちらほらと明かりが灯っていった。
さびれた白い街灯を窓際から眺めながら、いちご味のシェイクを飲む私の前では、翔平が大きなハンバーガーをほおばっている。
「どう?最近」
「…まあまあ、かな」
きっと、何かを聞きたいとか話したいとか、そういう具体的な用事があるわけではなかった。
このごろふさぎ込んでいることの多い私を心配して、気を紛らせに来てくれたのだと思う。
翔平と過ごす時間が好きなのは、その時間だけが現実から離れられる気がするからだ。
音楽の話、夢の話。
それらは、現実では許されないものだった。
現実世界で押し潰されている、本当の私と向き合うことができる時間。
それは、同じものを愛し、同じ夢を持つ翔平にしか作れない時間だった。