音色
『万が一…万が一だぞ、アーティストとしてやっていけなくなった時、中卒じゃあ何というか…厳しいだろう』

つまり、学歴だけはある程度あったほうが、安心だということだった。


『お前もまだ若いんだし、焦らなくても、音楽は高校行きながらでもできるだろ?大学もまぁ、先生としては勧めたいが、それはまたその時のお前の気持ち次第だ』

『…じゃあ…』

『高校、受けるだろ?』

『はい』


不安なら、もちろんあった。

だから、『高校くらいは出たほうがいい』という先生の言葉を、私はほとんどためらいなく受け入れた。


そして、地元で一、二を争う進学率を誇るここ、月嶋高校へ通うことになったのだった。

< 7 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop