音色
進学率が高いといっても、月嶋のランクは中の上というところで、苦手な数学さえ克服すれば何とか受かるレベルだった。

だから、油断していた。


この高校は一年生から本格的な受験勉強に入る。

毎日忙しくて、結局最初の一年で、愛用のギターの入った黒いケースは薄いホコリを被ってしまっていた。


最近、ようやく高校生活に慣れ、音楽とも両立できるようになってきたところなのだ。


高校に進学したことを、後悔したことは一度もない。

勉強は大変だけれど、そのぶん先生や友達との距離も近い。

親友の彩(あや)だって、賢い彼女と前後の席になった時、たびたび勉強を教わるうちに仲良くなったのだ。

月嶋高校は、弁護士を務めるお父さん、私立小学校の先生を務めるお母さんからも信頼されている。



すべて、上手くいっていた。

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