音色
窓を開けると、まだいくぶん涼しい風が日差しと共に入り込んできた。
「初めて皆で海に行ったときは、尚央は三歳ぐらいだったっけね」
黙々と働かせていた手をふと止めて、尚央は机に頬杖をついて、しばらくぼんやりと画面を眺めている。
「俺もまた行きたいな、海」
尚央の目は、画面の中の海の、ずっと向こうを見ているようだった。
「そうだね。今度は一緒に行こうね」
日の光を反射した、まぶしい木々の葉を眺めながら、私は答えた。
「絶対、行こうね」
私はもう一度言った。
尚央はにっこりと優しく微笑むと、再び筆をとった。