音色


誰も知らなかった。


私のことは、誰にも分からなかった。


皆、熱を持たない人形だった。


「司沙も夢に向かって進んでるんじゃん。仲間ができて」

「…そうだね」

「私も、もちろん応援してるけどね!」

「うん、ありがとう」


人に話せない悩み。


人とは分かち合えない、悲しさ、寂しさ、嬉しさ。


「普通」がうらやましかった。


けれど、私はその「普通」から逃れようとしていた。

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