音色
「夏休み明けの模試は、進路が決まる大事な模試よ。皆さん、しっかり勉強しましょうね」
春まではBGMのようだった黒川先生の言葉を、クラスの皆は真剣な目で聞いていた。
教室はいつしか、同じ目標を持った子たちの一体感で満ちていた。
私だけが、取り残されていた。
こんなにも静かで確かな熱気の中で、自分の小さな炎を灯し続けている。
責めるように押し寄せる、正しい熱にかき消されないように、ずっと一人で守っている。
その熱は、私にとっては冷たいのだ。
燃え上がるほどに、私にとっては尖った氷のように冷たく、その切っ先をそっとあたしに向ける。
私は、一人で立っている。