意味するもの。その先にあるもの。
想い人
コツコツ。
寂しく響く足音。
人通りの少ない廊下。
ひんやりと冷たい空気。
その場に馴染むことの出来ない信五。
手には小さな花束。
病室の前で立ち止まる。
プレートに書かれた名前。
プレートに手をあてると持っている花をドアの前へ置く。
「村上?」
声がするほうへ振り向く信五。
「やっぱり村上や。久しぶりやな?その花。いつもありがとうな。」
ビニール袋を片手に駆け寄ってくる剛。
「いえ。いつも挨拶もしないで。ここに置いて行くばかりで。すいません。」
軽く頭を下げる。
「気にするなや。お前の気持ちはよう分かってる。光一に会うて行くやろ?」
ドアを指差す剛。
「…。」
戸惑う信五。
「会うて行ってくれや。いつも俺一人やから。」
切なそうな表情で信五を見る。
「ほな少しだけ。」
複雑な思いの信五を横にドアを開ける剛。