意味するもの。その先にあるもの。
過去と現在




雲一つない空。
生ぬるい風。
フェンスを殴りつける裕。
うっすらと濡れた瞳。
  
「やっぱここにおってん。」

後姿に声をかけるすばる。
   
「気にするなや。さっきのこと。」

裕の肩へと手をかける信五。
   
「信五。わりぃが左側にくるんはやめてくれひんか。」

フェンスの向こうを見つめたままの裕。
  

「お前、まさか…。」


驚いた表情のすばると信五。
   

「…ついに見えんくなってもうたわ…。こんな綺麗な空なんに…俺の左目にはもう何も映
ることもないねん…。」 


俯いたままもう一度フェンスを殴りつける裕。
   
「…裕…。」

かける言葉のみつからないも信五。
  



ドアに向かい走り出すすばる。
   
「何処行くねん。」

後姿に問いかける信五。
  
「ちょっと行ってくるわ。」

振り向くすばる。
   

「行くって何処や。まさか…。」
「…。」


信五の問いかけに答えないすばる。
   
「すばる。やめてくれ。」

すばるを止める裕。
  
「安心しいや。俺も光一さんから学んでるねん。裕の考えてることはしいひんよ。意味の
ない喧嘩はしいへんから。」 

屋上を後にするすばる。
黙ってその後ろ姿を見送る裕と信五。






< 40 / 78 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop