意味するもの。その先にあるもの。




赤く腫れた顔。
口元をつたう血。
お腹をかかえ走り続ける裕。
遠くから聞こえる“横山”と叫び続ける怒声。
金属音。
何度も後ろを振り向く。
足がもつれ転ぶ裕。
手から滲み出る血。
痛みを堪え立ち上がる。
   

「こっちや。」


裕の手を引っ張り建物の中へ引きずり込む光一。
建物の前を多くの足音が通り過ぎる。

   


「ハァハァハァ…。」

激しい息づかい。
壁にもたれる裕の顔に冷えたペットボトルをくっつける。
   
「冷やしたほうがええ。」

ペットボトルを裕へと差し出す。
   
「…。」

黙って受け取る裕。
   
「お前、何してん?仲間にボコられるってことは相当なことやったんやろ?」

テキパキと裕の傷の手当てをする光一。
   

「あんたには関係ねぇ。」


そっぽを向く裕。
   
「そう言われたらそうやけどな。」

笑ってみせる光一。
   

「ってか敵を助けるやつなんて初めて見たわ。」


苦笑する裕。
   
「そう?敵も見方もないん思うんやけどね。」
「あんた変わってるわ。」

光一の不思議さに笑いだす裕。
   
「よう言われるわ。これからどうするん?」

傷の手当を終わらすと裕の横へと座る。
   
「どうするやろ?もう戻れんやろうし。」

両手をあげ伸びをする裕。
   

「行くとこないんやろ?俺と一緒にくるか?」
「何やって???」


驚いた表情の裕。
   
「せやからうちのとこ来るか言うてんねん。」

口角を微笑む光一。
   
「アホやろう?俺なんか連れてったらあんたも行くとこなくなるで。」
「大丈夫や。」

何も根拠のない光一の言葉。
   
「ええって。」
「遠慮するなや。」

強引に裕の腕を引っ張る光一。
   
「遠慮なんてしてひんわ。」

腕を振りほどこうとする裕。




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