意味するもの。その先にあるもの。
和やかな時間が過ぎる病室。
ポケットの中で震える携帯。
携帯を手に取る裕。
着信 すばる
「アホ。お前ここ病院やで。電源くらい切っとくんが常識やろ。」
裕の手で震える携帯を確認すると呆れたように注意する信五。
「忘れとったわ。せやけど嫌な予感するねん。」
携帯を見つめる裕。
「でいや。かまへんで。ちょっとくらいならええやろ。」
裕の不安そうな瞳に声をかける剛。
「すいません。」
携帯を片手に病室の隅へと移動する。
「もしもし。」
「何処におるん?」
受話器越しに聞こえるすばるの声。
「光一さんの病院や。何かあってん?」
「章大が。章大があいつらにつれてかれたらしいわ。俺等は今から博貴等と合流してあいつらんとこ行こう思うてる。」
淡々と語るすばるだが焦りが感じられる。
「わかった。俺等もすぐ行く。すばる。分かってるやろうな?」
念を押す裕の声に一斉に注目を浴びる。
「お前が来るまでGOサインは出さんのやろ?」
強い口調で答えるすばる。
「ああ。絶対に手を出すんやないで。」
低い声。
濁っていく瞳。
「わっかてるわ。ほな。後で。」
携帯を切る裕。
信五へと目を向けると
何かを察ししたように頷く信五。
「剛さん。光一さん。俺等はこれで。」
慌てるわけでもなく冷静に言葉にする裕。
「まだええやないか?」
引き止める剛の言葉を遮る。
「すいません。守らなあかん仲間がおるんです。」
深く頭を下げる裕。
「行ってこいや。」
「光一?」
「無茶はするなや。剛みたいに。」
悪戯に微笑む光一。
「はい。」
その言葉の意味に力強く頷く裕。
「ほな。信五行くで。」
「失礼します。」
病室を出ると廊下を走り出す裕と信五。