意味するもの。その先にあるもの。
   




「雄一が本当のことを言えない空気を作ってたんは俺等じゃねぇのか。あの時からずっと雄一の様子がおかしいのに何も聞こうとしないで割れ物を扱うかのように雄一に接してきた俺等にも責任があるんじゃねぇのかよ。」

うな垂れたままの雄一。
その様子を見つめることしか出来ない竜也と淳之介。
   

「確かにそうかもしれない。雄一だけでなく。和也。お前にもな。」


和也に目を向ける仁。
   
「…仁…。」
「智久の死、横山のことに関しても辛いのも悲しいのもお前だけじゃねぇんだよ。みんなだってお前と同じ気持ちだよ。」

和也の背中を包み込むように抱きしめる。
   
「お前だけじゃねぇんだよ。」
「…。」

俯いたまま声をならない和也。
情けなさがこみ上げる。
流れる沈黙。
視線さえおぼつかない。
   

「結局…俺は何もしてやれひんかったんやな。守ってるつもりが追いつめてしもうて。傷つけてしもうて。俺の…独りよがりやな…。」   


沈黙を破る裕の声。
視線が裕へと集まる。
   
「せやけどな…気づいてほしかってん。お前等にも。」

和也や仁、雄一達に目を向ける。
   
「お前達にも。」

忠義や博貴、章大達を見つめる。
   

「気づいてほしかってん。…喧嘩に意味なんてもたひんことを…。喧嘩の先に待ってるんは悲しみや苦しみだけやなく。憎しみという感情…恨みという闇そして復讐という悪魔。…その先には何もあらひんねん…。ただ連鎖的に繰り返される心の傷しか残らなん…。」


力ない声。
瞳に光る泪。
痛々しい傷。
ぼやけた視界。
歪む視界。
全身の力が抜ける裕。
スローモーション。
   
「裕。」

叫びと同時に裕に駆け出す。
地べたに倒れこむようにうずくまる裕の姿。
   
「裕。しっかりしいや。」

裕の身体を支える信五。
血の気のない顔。
苦痛に歪める顔。
遠くに聞こえる裕を呼ぶ声。




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