まばたき

　ときどき、涼はとても悲しそうな表情をする。
「どうしたの？涼、悲しいの？」
　涼はゆっくりとまぶたを閉じる。
「どうして？なにが悲しいの？」
　涼はかすかにまぶたを震わせる。
「涼はまた、お母さんを悲しませてると思うのね？」
　涼はゆっくりとまぶたを閉じる。
「お母さんは悲しくないよ。涼が生きててくれてうれしいよ。お母さんの子に生まれてくれてうれしいよ。涼の手が、こんなにあったかくてうれしいよ。」
　涼の目に、かすかにうっすらと涙がにじむ。
「だから涼、悲しまないで。お母さん、涼のためにがんばって仕事ができてうれしいんだよ」
　涼はまた、かすかにまぶたを震わせる。
「そうか、やっぱり涼は悲しいんだね。また、ギターを弾きたいんだよね」
　涼はゆっくりとまぶたを閉じる。