まばたき
 
 ゆりちゃんが病室に姿を見せたのは、3年ぶりだった。
「涼ママ、私、結婚することになった」
 ゆりちゃんは複雑な表情で私に告げた。
「ほんと?うれしい。よかった。ゆりちゃんにはずっと幸せになって欲しかったの」
 私はゆりちゃんの手をにぎって喜んだ。ちゃんと、涼に報告に来てくれたことがうれしかった。
 
 この子は私とともに、苦しみを背負って生きてきたのだ。
 この子がどんな思いで、涼への思いを断ち切って、新しい恋に踏み出したのかを知っている私には、本当にうれしいできごとだった。
 
 ゆりちゃんは涼の手をにぎっった。
「涼、ごめん。私、他の人と結婚するよ。私、涼じゃない人の奥さんになって、その人の子どもを生むよ・・・」
 ゆりちゃんは泣き出してしまった。手がつけられないほどに。大きく肩を震わせて、赤ん坊のように嗚咽しだしてしまった。
 私はゆりちゃんの肩を抱いた。そして、一緒に泣いた。久しぶりに泣いた。
 「涼、ゆりちゃん、結婚するんだって。よかったね。ゆりちゃん、幸せになるんだよ。これで涼も安心だね。」
 涼は、ゆっくりと2回目を閉じた。

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