,こだわり
「違うよ。汚れるからその雑誌の上に座ればいいと思って」

私はまた見当違いなことをやってしまったらしい。

でもこのくらいのことはいつものことで、大したことではない。

いちいち言い訳をするほどのことでもないだろう。

私は黙って男が置いた雑誌から手を離し、その上に座った。

「もともと大人しい性格なの?それとも俺のこと警戒してるの?」

「両方」

「大丈夫だよ。何も変な気持はないからさ。ただ本当に話したかっただけだよ」

男の目は大きい。肌はあまり黒くない。髪は漆黒、短く切ってわざと毛先を立たせて遊ばせている。

私は男の容姿を目に映ったままではなく、言葉に変えて記憶した。

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