,こだわり
彼は低く落ち着いた声で、どもったり途切れたりすることはなく、すらすらと言葉を発する。

およそ病人の喋り方とは思えない。

彼は病院に通い始めたばかりのようなことを言っていたが、発症したばかりだと普通は、身の回りのことまで気が回らなくなるものだ。

それなのに彼は、見た目もクリエイティブな仕事をしている人らしくおしゃれだ。

彼は一体何の病気を患っているのだろう?

私は携帯を握り締めたまま、彼について考えていた。

そしてふっと気が付いた。

私が男性に興味を持ち、その人物について考えるなど、本当に久しぶりだということに。
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