,こだわり
私はテストの答えは質問の下の空白に書く、あるいは質問の下に記された物の内から選んで印をつけるものだと思っていた。

だから試験の時間であるにも拘らず、その表自体がテスト用紙だと気が付かなかった私は四十五分間、ただじっとしていた。

そしてずっと何だか分からない表が書かれてある紙を見つめていた。


なぜか私がその表に何も書き込まなかったことを、母は知っていた。

そしていつの間に手に入れたのか、自宅でその表を私の前で広げて見せて、静かな声で丁寧に表の見方を教えてくれた。

母の説明が終わる頃、私はその表がただの紙ではなく、いつも小学校でやっているテスト用紙なのだということに、やっと気が付いたのだった。
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