ココアブラウン
「今日はもう帰っていいんですよね。今日私コンパだったのに。遅れちゃった」

絵里は化粧ポーチを取り出した。

「明日から大変なんですよね。あーあ、話違うよ。楽な会社だと思ったのに。じゃ、私メイクなおしてもう行きます」

絵里はさっさとオフィスを後にした。携帯をかけながら。

あたしも更衣室で帰り支度を始めた。
制服を脱ぎながら考えた。ずっと。
どこから情報が漏れたのか、誰がこんなことをやったのか。いったいいつからなのか。
そして苦笑した。

ー絵里はもうコンパのこと考えてるのにー

まだなれない8センチのヒールを履いた。
かばんを持ってからハンガーに制服をかけた。もう長いこと着ている制服は隣にかかっている絵里のものに較べて明らかにくたびれていた。
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表紙・目次

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